DeepSeekショックとは?株式への影響と今後の展望をわかりやすく解説【米国株】

株式投資

2025年1月27日、中国企業のDeepSeekが既存の最新AIを凌駕する新しいAIモデルを発表したことで、アメリカのAI関連企業、特に半導体関連企業の株価が大きく下落しました。

このDeepSeekショックから1週間がたった今、情報を整理してDeepSeekショックについてとその影響を株式投資初心者の方にもわかりやすく解説します。

DeepSeekショック(概要と原因)

DeepSeekとは

DeepSeekは中国に拠点を置く、AI開発のスタートアップ企業です。2024年12月に「DeepSeek-V3」、2025年1月にさらに性能を向上させた「DeepSeek-R1」を公開しました。

また、「DeepSeek-R1」公開後、iPhoneのアプリストアであるapp storeにおいて、DeepSeekのアプリはChatGPTを抜いてダウンロードランキング1位となりました。

DeepSeekショックの原因

「DeepSeek-R1」の公開が株式市場に影響を及ぼしたのは、新モデルAIの性能と開発に要した費用・時間の少なさが、AI開発に高性能なコンピューターが必要でないかもしてないという懸念を浮上させたためです。

ChatGPT」を開発するOpenAI、「Gemini」を開発すGoogle(Alphabet)、「Llama」を開発するMETAなど、また、それらAIを開発するうえで必須となる高性能GPUを提供するNvidiaなど、「DeepSeek-R1」公開以前はAI開発においてアメリカ企業が一強状態でした。

先に述べた通り「DeepSeek-R1」が市場を驚かせたのは、性能と開発に要した費用・時間の少なさです。

性能については、OpenAIがリリースする最新のAIモデルである「ChatGPT-o1」に匹敵するといわれています。

開発に要した費用時間については、わずか2か月600万ドル(約9億2000万円)未満で構築されたとDeepSeek社によって発表されています。また、同社によると、Nvidiaの最新高性能チップは使用せず低機能チップH800を使用しているといいます。

現在アメリカで行われているAI開発は時間も費用もこの数倍必要としています。そのため、「DeepSeek-R1」の登場によって、AI開発におけるアメリカ一強状態が終了し、AIバブルがはじけるのではないかという危惧が今回のDeepSeekショックを引き起こしました。

DeepSeekショックが株式市場に与えた影響

AI関連銘柄の株価下落

DeepSeekのAI新モデルの発表はアメリカのAI関連企業に大きな影響を与えました。

DeepSeekは高性能AIモデルをより低コストで最先端の半導体を使わずに訓練していると発表し、これまで大きく上昇してきた半導体株関連インフラ株電力株を圧迫しました。

半導体大手のNvidiaの株価は17%下落し、時価総額が約6000億ドル(約90兆円)減少しました。これは、1日で損失した時価総額として米国史上最大となりました。

また、エネルギー株のNano Neuclear EnergyNuScale PowerOkloなどは時価総額の4分の1程度を失いました。

一方、ポジティブな影響も

AIを利用するソフトウェア開発企業はDeepSeek登場の恩恵を受ける可能性があります。

半導体チップの価格が下がったりAI開発に必要なチップの量が減少すれば、Nvidiaの顧客企業にとっては恩恵がもたらされます。

また、DeepSeekのようにコスト効率の良いAIモデルの登場によってAIアプリケーションの開発及び運用コストが低減することが期待されています。

実際、Nvidiaのような半導体株が下落するなか、SalesforceAppleのようなAIアプリケーション関連の銘柄は株価上昇しています。

DeepSeekショック、今後の展望

DeepSeek社による公表は真実か

DeepSeekにより開発された新モデルAIは、最新の「ChatGPT-o1」に匹敵する性能を持つといわれていますが、その開発において、いくつかの疑惑が浮上しています。

情報不正取得疑惑

DeepSeekのAI開発において情報の不正取得があったのではないかという疑惑が浮上しています。

米Bloombergの報道によれば、Microsoftのセキュリティ研究者はDeepSeekと関連があるとみられるグループが、OpenAIのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて大量のデータを不正に取得しているのを昨年秋に確認したとのことです。

DeepSeekはわずか2カ月で「ChatGPT-o1」に匹敵する性能をもつAIモデルを開発したと発表していますが、ChatGPTを開発するOpenAIのデータを取得していたとすると、その短い開発期間も納得できます。

Nvidia製H100チップ使用疑惑

また、DeepSeekは低機能H800チップを使用し、低コストでAI開発を行ったと発表していますが、その開発費にも疑惑が浮上しています。

米CNBCはDeepSeekがNVIDIA H100を5万台確保している可能性を報じています。NVIDIA H100は中国に対して輸出規制がかけられていますが、シンガポール経由で不正にH100を輸入しているとの疑惑があります。

H100はおよそ3万ドルであるため、5万台保有しているとなると、それだけで15億ドルとなり公表値の600万ドルとはかけ離れた価格となります。

株価下落は限定的?

英調査会社TSロンバードの調査責任者アンドレア・チコーネ氏は、DeepSeekのコスト削減の躍進は、懸念されるような惨事を引き起こすものではないと指摘しています。

コスト面での優位性は「投資を減らすのではなく、増やすことが多い」ことを歴史は示しているとし、例えば、航空旅行、再生可能エネルギー、消費財、宇宙探査のコスト低下は一貫して需要と生産能力の拡大を牽引してきたと同氏は記しました。

より手頃なAIソリューションが同社のチップの需要を押し上げ、生産能力とイノベーションへの投資を可能にするため、Nvidiaはこうした傾向から恩恵を受ける可能性があるとしています。チコーネ氏は、エヌビディアは引き続き価値を獲得する好位置にいると見ています。

S&P 500、NASDAQ 100は堅調

DeepSeekショックを受け、1月27日にS&P 500は-1.46%、NASDAQ 100は-3.06%と両指数とも下落しました。しかし、DeepSeekショックから1週間がたった今、両指数とも株価を最高値付近まで戻してきています。

様々な業種を含むS&P 500だけでなく、ハイテク銘柄が多いNASDAQ 100も株価を戻していることから、半導体などの一部の業種のみが影響を受けていることがわかります。

DeepSeekショックを受け、一部の業種だけに集中投資することのリスクの大きさを改めて体感しました。

まとめ

DeepSeekショックは、AI業界と株式市場に大きな影響を与えました。しかし、これは「AI産業の終わり」ではなく、「新たな競争の始まり」とも言えます。

また、DeepSeekについては不透明な部分が多く残っています。今後の調査により、新たな情報がもたらされ、株式市場に影響を及ぼすかもしれません。そのため、最新のニュースや企業の動向に注意を払っていきたいです。

AI革命はまだ始まったばかり。これからも成長を続ける分野だからこそ、適切なリスク管理をしながらチャンスを掴んでいきましょう!

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